今日8月31日、JR東日本とJR東海はそれぞれのプレスリリースで、2社オリジナルのネット予約サービスである「えきねっと」「エクスプレス予約」で予約したチケットをそれぞれの会社の券売機で受け取れるように改修することを発表しました。
「それだけ?」と思うなかれ。
現状で発生しているちょっとした不便が消えるのです。
現状は?
日本ではかつて国鉄が全国のきっぷ手配を請け負っていた名残で、通常のきっぷ購入では全国のJR6社で同じように手続きをすることが出来るようになっています。
しかし民営会社である6社は、それとは別に独自の値引きや特典を取り入れた、窓口を介さないwebでの予約サービスも開始しています。
いま稼働しているのは、おおむね上場4社が主体となっている次の4つです。
(このほかにサイバーステーション予約などマイナーなものもあります)
これら4社のサービスは、お互い直通することの多い新幹線に関わる一部を除き、あるサービスで予約したきっぷはそのサービスのエリア内での受け取るのが原則とされてきました。
なにが不便なの?
たとえばJR西日本のe5489サービスの場合、その受け取りはサービスエリア内+αにとどまり、JR東日本の東北方面では受け取ることが出来ません。
また当然ながら、受け取れない範囲のきっぷは予約することも不可能です。
したがって、例えば大阪あたりから東北方面へ出かける場合、e5489単独では予約がそもそも出来ず、必ず別サービス(=えきねっと)、もしくは窓口での手配が必要になってきます。割引率を考えれば、通常はえきねっとでの予約がベターでしょう。
しかしそうすると、新大阪→東京→仙台のようなシームレスな乗り継ぎであっても、発駅できっぷをすべて受け取ることが出来ません。乗り換え改札や、駅によっては改札外、時には駅舎の窓口に並んで受け取らないといけないのです。
さらによくある問題として、東海道新幹線や寝台特急サンライズ出雲のきっぷの問題があります。
JR東日本エリアの首都圏民が西日本へ行く場合、ふつうはJR東海のエクスプレス予約で新幹線を取るか、現状で唯一サンライズ出雲をネット予約できるe5489を使うでしょう。e5489は原則として都区内各駅や北陸新幹線の駅では受け取りが可能です。しかしJR東海の区間を含む場合だけ、これらのきっぷは「横浜」や「千葉」といった大都市であっても、同じe5489なのにJR東日本の駅で受け取りができません。在来線で東京駅へ向かい、そこでJR東海の券売機を叩かないと受け取ることが出来ないのです。
きっぷを受取って乗車する|エクスプレス予約 新幹線の会員制ネット予約
旅慣れている人であればいいでしょうが、ふつうの人は「JR〇〇の券売機」を構内で正確に把握しては居ないでしょう。
こうした乗り継ぎだけなら一本逃すだけで済むかもしれませんが、えきねっとやe5489で往復を予約したきっぷでどこかへ出かけた後、エリア外に出てしまったから帰りのきっぷが出せない……なんてことも。
加えて新幹線なら良いのですが、最近は臨時列車や観光列車で田舎のローカル線……すなわち会社の境界すぐそばを走る列車も見られるようになってきています。そして多くの場合、そうした地域では一本逃すと厳しかったり、駅が無人で受け取りができないこともあります。そうした、他社エリアから入ってすぐの観光列車に乗り継ぐ時にそのきっぷを予め発券しておきたい、なんて用心も現状では難しかったりするのです。
JR各社のネット予約システム。実はかなり不便なものである。JR東日本の「えきねっと」で予約したものは、JR西日本の北陸新幹線各駅を除きJR東日本とJR北海道の券売機や「みどりの窓口」でしか受け取ることができない。JR西日本の「e5489」とJR九州の「インターネット列車予約」は、JR西日本・JR四国・JR九州の券売機もしくは「みどりの窓口」でしか原則きっぷを受け取ることができず、JR東日本の駅で受け取ることができるといっても23区内の駅と東京周辺のJR東日本の新幹線駅、北陸新幹線の停車駅だけである。
JR東海 未整備だった在来線特急のネット予約を西日本「e5489」で解消へ(小林拓矢) - 個人 - Yahoo!ニュース
今回の発表
今回のプレスリリースでは、2022年春を目処に、そうした不便を解消することが発表されました。
JR東海の受け取り範囲は若干濁されていますが、おそらくは東海道新幹線各駅+名古屋市内なのではないかと思われます。
JR東日本の受け取り範囲はかなり明瞭で、新幹線の周辺の駅でさきにきっぷを受け取れるようになります。これはEX予約が「特定都区市内」の制度がないために、新幹線駅まで別のきっぷが必要なのに合わせた形でしょう。
これからどうなる?
現状では、JR東海系列の新幹線と在来線特急(JR東日本の駅に乗り入れる特急しなの、特急ふじかわ、など)の乗り継ぎ予約はe5489でしか出来ないため、もし東海からでかけた人がうっかり帰りのきっぷを発券していないと「帰りのきっぷが出せない」という事態もおきえます。そうした意味では、まだ完全に利用者の不便が解消されたわけではありません。
一方で、今回の決定で東海~首都圏のかなり広い範囲で本島3社の予約システムが受け取れるようになってきます。まだ少ないとはいえ、北陸新幹線全通や、リニア品川駅開業で、西日本から東日本へ、東海から東日本への流動が増えることを見越しているのかもしれません。
これまでは在来線でe5489に頼るなど、西日本寄りだったJR東海。今回の発表を試金石に、少しずつ2社の提携が進んでいくのでしょうか。