京都、大阪、神戸。京阪神3都市には仲良く地下鉄と市バスがあり、市内をくまなく走り回っています。
かつてはどの街にも共通の磁気カードがあり、それを使うのがオトクだったわけですが、今や「ICカード」やら「ポイントサービス」やらどんどんややこしくなり、街によっても使えるものが違う始末。
さて今年は、4月からその神戸と大阪のポイントサービスにちょっとした変化があります。4月と言えば就職進学と新しく3都で生活を始める向きも多いハズ。
そこで軽く、「とりあえず何使っとけばいいのか」という疑問を抱えるライトユーザー向けに3都のあれこれをまとめてみました。
京都市交通局
京都市交通局では、基本的には磁気の「トラフィカ京カード」の利用がお得になります。(京都市交通局のバスがない山科区などのエリアでは紙の回数券あり)
○磁気カード
京都市交通局では「トラフィカ京カード」(以下、トラフィカ)という磁気カードを発売しています。1000円、3000円のカードが有り、京都市交通局の「地下鉄」「市バス」、また民間の「京都バス」「西日本JRバス(2021年3月~*1)」でも使用可能となっています。地下鉄券売機のほか、バス車内、主要ターミナルの自動販売機など、駅以外で購入可能な場所が多いのも特徴です。
○その他
市内共通回数券や昼間回数券、連絡券など、バスの紙券がかなりたくさん存在する。*2*3
ここでは割愛しますが、おおむね以下のようなイメージ。
- 共通回数券の割引率はトラフィカとほとんど変わらない。
- 昼間回数券はトラフィカよりオトク。
- 回数券は乗継割引は効かないので、その場合はトラフィカが有利。
- トラフィカが使えないバス会社相手でも連絡券は売っている。
とくに市バスがない市内東部の山科区周辺(といってももうすぐ延伸しますが*4)等、阪急バス・京阪バス・京阪京都交通エリアでは回数券の出番はかなり多くなるはず。
○1割おとく&利用額割引
磁気のトラフィカは1000円、3000円のカード、いずれも+1割(100円、300円)があらかじめチャージされています。*5
ICカードでは、PiTaPaに利用額割引があります。PiTaPaカードで1ヶ月間に3000円以上を利用すると、おおむね10%(正確には9.09%)の割引が適用されます。*6
トラフィカは有効期限も特に無いため、とりあえずこれを買って利用し、余った分は今度別の用事ができた時に残しておくことも可能です。また切符への引き換えも可能なため、複数人での利用にも便利です。
PiTaPaを利用しても割引率は変わらないのですが、3000円以下の利用の場合や、仮に何ヶ月かに分けて3000円以上利用した場合は、ポイントサービスもなく、一切の割引がありません。
基本的にはトラフィカを使用したほうがいいでしょう。
○乗継割引
磁気のトラフィカはバス~バス、バス~地下鉄の乗り継ぎとも一律で120円の乗継割引が効きます。また紙のバス→地下鉄連絡券、磁気の地下鉄→バス連絡券も同じ割引額となります。*7
ICカードでは全国共通利用の全カードとPiTaPaに乗継割引が適用されます。バス~バスで90円、バス~地下鉄で60円です。
またいずれも、偶数回目の乗車に乗継割引適用となるため、バス→地下鉄→バスのような3連続割引はありません。
ICカードの乗継割引が磁気や紙を上回ることはないため、複数回使う人はトラフィカ、一回や往復程度なら券売機等で連絡券を買うといいでしょう。
○ポイントサービス
現在導入されていません(令和5年度の導入予定、3000円以上で1~3%)。*8
○定期券関係
定期券は紙、磁気、ICOCA、ほかにPiTaPaの区間指定割引があります*9。あまり差はありませんが、バスなら総じてICOCA定期券がお得、乗り継ぎ利用があるなら磁気定期がお得です。
・紙定期
特長:とくにない。強いて言えば、他社のIC定期類と同じ財布に入れても干渉しない。
・磁気定期
特長:トラフィカと組み合わせることで地下鉄に乗継割引を適用できる。
・ICOCA定期
特長:券面記載区間やフリー区間の他、並行する京都バスやJR西日本バスが利用可能になる。(京阪バスなどは不可)
特長:あまり使わない月は利用した額だけ、使いまくった月は一ヶ月定期券の額だけ支払える。(1ヶ月以上の定期、例えば6ヶ月定期に比べれば割高)
どれも一長一短があるため、利用シーンに合わせる必要がありますね。
○総評
トラフィカって便利。
京都市交通局では令和5年度の磁気縮小化を目指し、トラフィカの廃止を推進しています。ただそれが「どこまで本気なのか?」と思うくらい、ほとんどの局面でトラフィカのほうがお得で有利なシステムが出来上がっています。乗り継がずに単発で乗るとしても、回数券が有るというICカード泣かせな状況。交通局関連のイベントではデザイントラフィカを発売するなど、トラフィカは市内の記念品としての需要も盛んです。
強いてトラフィカに不利な点をあげるなら、次の2点があげられます。
・バスでの精算がわりと遅い
松江や、かつての岡山など、各地で共通磁気カードを利用してきた経験から言って、京都市のバスのリーダーはめちゃくちゃ処理速度が遅い。正直、一瞬「え、カード呑まれた?」と不安になるレベルです。また2枚精算の場合に、バスだと運転手の操作が必要なのも難点。
・市内の「すべて」の交通では使えない
ぶっちゃけ市内中心部にはほとんど走ってないので関係ないと言えば関係ありませんが、京阪バス、京阪京都交通には使えないというちょっとした罠があります。また鉄道は地下鉄以外使えないため、四条で接続する阪急線や太秦で接続する嵐電なども当然不可能。さらに竹田で直通運転する近鉄線も不可。京都バスと使える「共通カード」ではありますが、「市内共通カード」ではないのが残念です。
以上から言うと、
といった感じ。ICカードのサービス向上に期待です。
大阪メトロ・大阪シティバス
大阪メトロ・大阪シティバスでは、基本的にICのPiTaPaカードがお得になります。
○磁気カード
大阪メトロ・大阪シティバス(以下、大阪)は「回数カード」という磁気カードを発売しています*10。3000円のカード一種類だけで、大阪メトロと大阪シティバスで使用可能となっています。地下鉄券売機のほか、バス車内、駅周辺の売店などで購入可能。バス車内を除けば、基本的には駅施設内で購入可能な場所が多いイメージです。
○回数カード&フリースタイル
磁気の回数カードは+1割(300円)があらかじめチャージされています。
発売額 | 利用可能額 | |
大人 | 3,000円 | 3,300円 |
小児 | 1,500円 | 1,650円 |
ICカードでは、PiTaPaにフリースタイルという利用額割引があります。PiTaPaカードで大阪で乗車すると、自動的に一般は1割引、学生は2割引で乗車可能。どちらもあらかじめ登録は必要ですが、居住地制限なども無いため誰でも使用可能。*11
一般の方であれば割引率は同じですが、1乗車からお得になるのでPiTaPaのほうが有利。とくに学生さんでは、割引率も高いPiTaPaを使わない理由がないですね。
○乗継割引
磁気の回数カード、ICの全国共通利用の全カードとPiTaPaで乗継割引が適用されます。バス~バスで210円、バス~地下鉄で100円です。*12
また他の多くの社局と違い、大阪では地下鉄→バス→バスのような3連続乗車でも割引が適用されます。
バス同士では乗継割引で2乗車めがタダになるなど、現金で乗るとかなり割高になる印象。
○ポイントサービス
あらかじめ登録の上、PiTaPaもしくはICOCAを使用して乗車すると、種類を問わず利用額の0.5~1%がポイントとして付与されます。(2021年度から)*13
ICOCAだと、スマートICOCAならクレジットチャージ分の還元で最大2%程度。PiTaPaの場合はフリースタイルも同時適用なので、登録すれば合わせて10.5~11%の還元になる計算ですね。
OSAKA PiTaPa (クレジット機能付) | OSAKA PiTaPa LiTE | その他のPiTaPa | ICOCA |
1か月のお支払額の1% | 1か月のお支払額の0.5% |
なんでもポイントが付くとなると「じゃあどれがいいの?」ってなりますよね。
いちおうOsakaPiTaPa(クレカ付き)が唯一の1%還元で一番オトクですが、クレカ付きのせいで年会費無料の条件が厳しすぎるので、オススメはしません(下記記事のとおり、JCBで良ければ条件はゆるいものの、審査は厳しい)。
なので普通のPiTaPaで良いかなと思います。
○定期券関係
PiTaPaにマイスタイルという神サービスがありますが、ややこしいので詳しくは割愛。*14
簡単に言うと、「心斎橋から大阪に通うけど、たまになんばにも顔を出すんよなあ」みたいな移動の時に、心斎橋~大阪の定期券代だけで心斎橋~なんばも乗れてしまうサービス。
1ヶ月の利用でも6ヶ月定期相当の割安な値段になるので、とりあえず検討するだけでも結構お得になると思います。
○総評
「ノーマルPiTaPaでええやん」
という感じ。回数カードは北大阪急行などでも使えないので、その点でもICカードは有利。PiTaPaならチャージレスなのも便利。そこにフリースタイル割引やポイントサービスも付与されるので、「使うだけで何も考えずにお得になる」という非常に使い勝手が良いシステム。ポイントも微々たる差でOsakaPiTaPaの生まれてきた意味がわからない感じなので、とりあえず普通のPiTaPaを作って持っておくと良いでしょう。
ただし定期を使う場合、振替輸送や乗越精算で定期券とマイスタイルには差が有るため、そこだけ注意が必要。もしメリットデメリットを考えて「定期券」を作る場合にはPiTaPaには載せられない(PiTaPaはマイスタイルのみ)ため、若干面倒かもしれない……。
神戸市交通局
神戸市交通局では……かなり時と場合による。たぶんPiTaPaが有利。
○磁気カード
神戸市交通局は「市バス専用カード」「市バス昼間専用カード」「市バス・地下鉄共通NEW Uラインカード」という3タイプの磁気カードを発売しています。多いわ。
券種はバスカードが1000円、2000円、共通カードが1000円、3000円の各2種類。多いわ。*15
このうち、「市バス昼間専用カード」は降車時に9時30分~16時00分に限って使用可能。時差回数券と違って土日に使えるというわけでもないので、注意が必要。
神戸市内ではかなりの会社線が入り乱れていますが、これらは「基本的に」神戸市交通局の神戸市バスと地下鉄でのみ使用可能となっています。(より正確に言うと使用可能場所は路線単位で決まっているので、路線図を見たほうが早い)例外が多い……。
また神鉄管理になる北神線谷上駅では改札機が使えません(でも乗継割引は効く)
地下鉄券売機のほか、駅売店などで購入可能。
○磁気カード&利用額割引
ややこしいことに磁気のカードはものによってオトク額が違う。種類多いわ。
・「市バス専用カード」は+1割オトク(京・阪の磁気カードと同じ)
・「市バス昼間専用カード」は+3割オトク(近隣の神姫バスNicoPa徳用と同じ)
・「市バス・地下鉄共通NEW Uラインカード1000円券」は驚きのZERO
・「市バス・地下鉄共通NEW Uラインカード3000円券」は+2割オトク(何故)
これちゃんと使い分けられている人いるんかな……。*16
種類 | 発売額<利用可能額> | 備考 |
---|---|---|
市バス専用カード | 大人1,000円<1,100円> 大人2,000円<2,200円> 小児 1,000円<1,100円> | ※令和3年6月末日に発売終了、令和4年3月末日に利用終了を予定しています。 |
市バス昼間専用カード | 大人1,000円<1,300円> 大人2,000円<2,600円> | ※利用時間は降車時の9時30分~16時00分 |
市バス・地下鉄共通NEW Uラインカード | 大人 1,000円<1,000円> 大人 3,000円<3,200円> 小児 1,000円<1,000円> | ※同日中のバス~地下鉄の乗継は20円引(小児10円引) |
市バス・地下鉄共通1日乗車券 | 大人 1,040円 | ※小児カードの販売はございません |
ICカードでは、PiTaPaに利用額割引があります。これもめんどくさいことに事細かに小数点以下3桁まで割引率が複数あるんですが、まあだいたい9%割引。バスの場合は1000円を超えて、地下鉄の場合は990円を超えてくると割引が適用になります(何故揃えなかったのか)。また北神線の利用分と西神山手線の利用分は合算されず、乗り通した場合は自動で按分した上で、別途で割引計算になります(どういうことなの)。*17
基本的には「市バス・地下鉄共通NEW Uラインカード3000円券」がオトク。
昼間にバスだけたくさん使う場合は「市バス昼間専用カード」。
○乗継割引
ややこしいことに(二度目)、乗り継ぎ先で使うものが変わってきます。
バス~地下鉄の場合、磁気のうち「市バス・地下鉄共通NEW Uラインカード」で20円の割引になります。*18
バス~バスの場合は、ICの全国共通利用の全カードとPiTaPaで210円の乗継割引が適用されます。*19
バス同士では乗継割引で2乗車めがタダになるので、ICカードが有利。
○ポイントサービス
市バスのみ設定あり。
あらかじめ登録の上、ICOCAを使用して乗車すると、利用額の5~30%がポイントとして付与されます。(2021年度から)*20
1乗車めから5%以上のポイントがつくので、若干磁気カードより目減りはしますが、乗継割引も考えるとオトクな印象。さらに一ヶ月でバス5往復に相当する2100円以上の利用で磁気カードと同等の割引率になります。
注意としては、今回の対象は市バス+山陽バスなので、一部の定期券で共通利用になる「神姫バス」は対象外。
クレカでチャージできるスマートICOCAが一番有利かしら。
○定期券関係
ふつうの定期券のみ。PiTaPaも定期券扱いなので登録割引はなし。*21
○総評
とりあえず何も考えないなら「市バス・地下鉄共通NEW Uラインカード」。
バスメインで地下鉄も使うならPiTaPa、バスだけ使うならICOCAでもええかな。
という印象。ぜんぜん結論がまとまらない。
PiTaPaは利用額割引が10%前後、対してICOCAも市バス2100円以上で同等からそれ以上の還元があるため、ちょっとむずかしい。
地下鉄とバスの乗継割引は20円程度のため微々たるものながら、共通カードは3000円券なら20%積み増しがあるので強い。
要点だけ整理すると、
バス~バスの乗り継ぎが有るならばICカード一択だが、それ以上は「自分にあったものを選んでくれ!」としか言いようがない状況。
しかも神戸市の場合、北区や西区だと神姫バスのNicoPaを使うことになるのでさらにややこしい。なんなんだこれ。
関連リンク
bengal103kobecity.hatenablog.com
どこでも使えるものは?
当たり前ですが、どこでも使えるならICカードしかありません。
特に関西であればPiTaPaでだいたいどこでもチャージレス(ポストペイ)で利用できるので、これでいいんじゃないでしょうか。
またモバイルチャージなどを使いたい場合は、共通利用のモバイルsuicaも選択肢に入ってくると思いますが、こちらは割引はありません。
自分の利用スタイルにあった方法を検討してみましょう。
*1:https://www.city.kyoto.lg.jp/kotsu/page/0000273571.html
*2:https://www.city.kyoto.lg.jp/kotsu/page/0000019521.html
*4:京都・山科区で市バス「復活」へ 四半世紀ぶり 地元「不便」受け(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
*5:https://www.city.kyoto.lg.jp/kotsu/page/0000032003.html
*6:https://www.city.kyoto.lg.jp/kotsu/page/0000214551.html
*7:https://www.city.kyoto.lg.jp/kotsu/page/0000033332.html
*8:http://www2.city.kyoto.lg.jp/shikai/img/iinkai/sangyokousui/R02/data/021225koutsu1.pdf
*9:https://www.city.kyoto.lg.jp/kotsu/category/167-0-0-0-0-0-0-0-0-0.html
*12:バスとバス、バスと地下鉄の乗り継ぎについて|Osaka Metro
*13:2021年4月1日から Osaka Point の乗車ポイント付与対象ICカードを拡大! & 最大1,600円相当のポイントがもらえる会員登録キャンペーンも開催~ Osaka Point 公式キャラクター「オポたん」「かどのすけ」も登場 ~|Osaka Metro
*15:神戸市:交通局では、便利でお得なプリペイド・カードを各種発売しています